「転校してきた女の名前は、
……御陵 ほづみだ」
「、」
「やむをえない事情があるのは分かるな?」
先輩たちが、一瞬にして押し黙る。
御陵という名前には、わたしにも聞き覚えがあった。……たしか、全国随一の、極道で。
「……事情はなんとなくわかった。
納得はしてあげるけど、理解はしないからね」
圧倒的な勢力を持っているから、今はもう、御陵だけが全国の土地を統一している形になっているとかなんとか。
……そういえば、ルノくんは御陵の人と知り合いなんじゃなかったかな。
あと、いっくんたちの先輩にあたる人もそうだったはず。
名前を知ってるだけでわたしは会ったことがないけど、たしかリナトさんだ。
「……わかった。
麻生、このあとどうせ授業出ないでしょ?」
「え、あ、はい」
「なら、俺とちょっとデートしようよ」
……このタイミングでなぜデートなんだ。
授業に出ないと言ってしまった手前、葛西先輩に「いやです」と面と向かって言う勇気はない。しかも。
「ついでに生徒会の仕事、一緒にしよ」
会計の立場を利用されてしまうと、補佐のわたしは従うしかない。
いつもなら「やめときなさい」なんて言ってくるあけみ先輩もめずらしく何も言わないし。
「麻生さぁ、」



