そのなみだに、ふれさせて。




「瑠璃には支えてくれる彼がいるから」



「……男?」



「あら、なにその不機嫌な顔。

嫌がってるの、まるで瑠璃の父親みたいよ?」



「……娘を嫁にやりたくないのと同じだよ」



……これだと、ななみは苦労しそうね。

瑠璃のことも娘みたいに可愛がってるから、そんな風に思う気持ちはわからなくもないけど。



シスコンな兄を3人持つだけでも大変なのに、いつみまで加わったら、瑠璃の結婚相手は相当スペックが高くないと無理な気がする。

……それよりも大事なのは相手を思う気持ちだってこと、みんなちゃんと分かってるけど。



それだけで上手くいかないから、この世界は難しい。

むずかしくて、だからこそ、価値があって。




「土曜日に連れていらっしゃいって言ったの」



「連れてこさせればいい。

椛と呉羽もいるしな。……判断してやるよ」



「あんまり干渉したら嫌われちゃうわよ?」



好きな人は別にいると言っていた瑠璃。

……誰を選ぶのかは、彼女次第だ。



「そろそろ寝ましょうか。

明日も早いんでしょう? いつみ」



「ああ。……おやすみ」



好きだとか、嫌いだとか。

そんな単純な考えばかりで何とかなるのだとしたら。……この世界はもっと、簡単だった。