そのなみだに、ふれさせて。




そしてわたしの12個年上のお兄ちゃんである呉ちゃんは、南々ちゃんの秘書さんだ。

南々ちゃんが生徒会長だった時にいろちゃんや呉ちゃんが役員だったこともあって、当時の関係はまだ切れないまま。



「別にいいよぉ……

呉ちゃん呼んだらいつでもすぐに来てくれるし、ほぼ毎朝会ってるもん」



「ふふ、それでも呉羽は、

"瑠璃が足りない"って嘆いてたわよ?」



「南々ちゃんお願いだからその会話ほかの人がいないとこでするようにしてね……!?

呉ちゃん色々誤解されちゃうからね!?」



「呉羽のブラコンとシスコンは、

もう事務所でも有名な話だから仕方ないわね」



「えええ……」



あんなにかっこいいのにブラコンとシスコンだなんて、ぜったい残念だって言われてるよ呉ちゃん……!

かくいうわたしもブラコンだから何も言えないけど……!




「そうそう、部屋で勉強するのよね?

なら、アップルパイと紅茶を用意して持っていくわ」



「アップルパイ……!? やったぁ」



「ふふ、ルアが送ってくれたのよ」



ルアちゃんのお家は、誰もが知る大企業、八王子グループ。彼はその社長息子だ。

8プロもその系列の事務所で、いまの王学の理事長はルアちゃんの双子のお兄さんであるルノちゃん。



ルノちゃんは理事長業に専念しているけれど、ルアちゃんは八王子のグローバル化のためにお仕事で世界を飛び回っていて、日本にはあまり居ない。

そしてどこか行く度に、こうやってお土産を送ってきてくれたりする。ルノちゃんとルアちゃんも、南々ちゃんと生徒会をつとめた人たちだ。



「ルアちゃん、今どこにいるの?」



「ニューヨーク支社に2週間、ですって。

アップルパイは新しくできた人気店で買ったものみたいよ?」