そのなみだに、ふれさせて。




「南々ちゃ、」



「大丈夫か?」



まるで取り繕おうとするみたいに、彼女の名前を呼ぶけれど。

いっくんが安心させるように南々ちゃんの肩を自分の方に抱き寄せたから、顔が見えなくなった。



「お前も疲れてるだろ。

晩飯もいいから、今日は先に部屋で休め」



南々ちゃんが、小さくうなずく。

ゆっくりいっくんから離れた南々ちゃんは、「ななみの寝顔でも見てくるわ」と薄く口角を上げる。それを見て苦しくなったのは、無理して作られた笑みだとわかっていたからだ。



「ごめんね、瑠璃。

……あなたを泣かせたかったわけじゃないのよ」



違う。……違うの、南々ちゃん。

なにも南々ちゃんは悪くない。悪いのは一方的に声を荒げてしまったわたしのほう。




「おやすみ。はやく寝なさいね」



それなのに南々ちゃんは、わたしを責める言葉なんて何ひとつ言わないで。

最後の最後まで愛情の籠った言葉だけをわたしに掛けて、リビングを出ていった。



「っ……」



傷つけてしまった。

間違いなく、わたしの言葉のせいで。



最近ずっとこんな調子だ。

誰とも上手くいかないし、泣いてばっかり。



余計に自分が嫌いになる。

傷つくのがわたしだけならいくらでも傷つくのに、相手を傷つけてしまっていることを知っているから、後味の悪さだけが幾分にも増して、後味の悪さが尾を引く。



「瑠璃」