「う、ううん。やっぱりいいや」
「そう?」
余計な詮索をするのはやめようと決めて、わたしも箱のそばに屈み込む。
たとう紙を開いて中の着物に視線を落とした南々ちゃんは、「綺麗な着物ね」と微笑んだ。
「一回着てみる?」
「ううん、この間着せてもらったの。
汚れちゃうと嫌だから、大事にしまっておくね」
「そうね。
今の生徒会の面々とこの先も関わっていくなら、着る機会だって少なく無いでしょうし」
南々ちゃんが、そっとわたしの頭を撫でる。
南々ちゃんはお姉ちゃんみたいだけど、お母さんみたいでもあって。胸の奥が、苦しい。
「青海さんに、会いたい?」
放たれた言葉に、目頭がじわりと熱くなった。
「あ、会いたく、ない……」
会いたくない。
わたしと、大事なお兄ちゃんたちと。すべてを捨てて男の人と出て行ってしまったお母さんになんて、会いたくない。……会いたく、ないのに。
「連絡さえすれば、いつでも会えるわよ」
「え、」
会えるという言葉に、ひどく動揺した。



