そのなみだに、ふれさせて。




え、なにこの荷物。

誰から?と添付されている送り状を覗き込めば、送り主の名は『菅原 最果』。……ああ!



「着物……!」



そうだ、この間先輩にプレゼントだってもらった赤い着物だ……!

あの後色々なことがあったせいですっかり頭から抜けていたけど、彼は本当にここまで送ってくれたらしい。



なるほど、

たとう紙に合わせてあるから箱が大きいのか。



「そうよね。

この家紋と、送り主の名前を見てすぐに分かったわ。菅原呉服店の跡継ぎも王学だったのね」



「……南々ちゃんって、本当に詳しいよね」



「わたしが着てる、紺色の着物あるでしょう?

あれは、菅原呉服店の着物だもの。随分と昔に買ったものだけれど、みさとと色違いなのよ」




南々ちゃんがたまに着ている、紺色の着物。

細部まで鮮やかなそれは確かに高級品なんだろうなって思ってたけど、菅原呉服店で買ってたのか……



「ねえねえ、南々ちゃん。

南々ちゃんって、もしかして"御陵家"のことにも詳しかったりするの?」



「あら、どうして?」



段ボールの開封を終えた南々ちゃんが、不思議そうにわたしを見る。

漆黒の瞳が会長とかぶって見えて、脳がくらりと揺れた。……どうして、って。



「えっと……」



好きな人の、彼女だから、なんだけど……

これってやっぱり、言わないほうが良いかな……?



っていうか、本人に聞かずにまわりの人に色々聞くのって、なんだかかぎ回ってるみたいで嫌だよね……?

わたしだって、ほかの子が「紫逢先輩の彼女ってどんな子なの?」って色々聞いてたら、嫌だし。