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「というわけで……
紫逢先輩が来たがってるんだけど、」
21時過ぎ。
いつものように子どもたちを寝かし終えた南々ちゃんに、こそっと相談する。いっくんは今日もまだ帰宅していなくて、どうやら遅くなるみたいだ。
「あら、連れてきたらいいじゃない。
……ただ、みんなに散々騒がれると思うけど」
「……"みんなに"?」
なんでそんなにたくさん来るみたいな言い方なの?
いろちゃんと、予定が合えば呉ちゃんが来るんじゃなかった?
「夕帆先輩、椛、莉央、ルノ、呉羽が来る予定なのよ。
ルアはまだニューヨークにいるし、夕陽はその日も翌日も仕事だからって今回は不参加」
増えてる……!!
っていうかこの間も夕くん個人的に来てたよね!?いっくんと仲良しなのは知ってるけど、仲良すぎだよ……!!
「だいじょうぶかな……」
「ふふっ、大丈夫よ。
この間会った時に思ったけど、彼、すごく礼儀正しいじゃない。葛西の名を引くとだけあって、立ち振る舞いは完璧だったもの」
「……南々ちゃん知ってたの?」
わたしは名前を聞いてもピンとこなかったのに、どうやら南々ちゃんはそうじゃないらしい。
はじめから、紫逢先輩が茶道の家元出身だと知っていたらしい。
「わたしの情報網はいろんなところにあるのよ。
……ああ、そうそう。昨日遅く帰ってきたから言わなかったんだけど、瑠璃に荷物が届いてるの」
「え、わたしに?」
なんだか話を逸らされた気がしなくもないけど、荷物の方が気になったためにスルー。
「取ってくるわ」と言って2階に上がった南々ちゃんが戻ってきたかと思えば、予想よりも大きな箱を持っていたから、思わず目を見張ってしまった。



