そのなみだに、ふれさせて。




なんとかしなきゃな、と考えていたら。

唐突に、目の前には先輩のきれいな顔が迫っていて。



「……俺に隠れて男と会うの?」



ちゅっとくちびるが触れたあと。

まるで拗ねるみたいにそう言われて、思わずきゅんとしてしまった。



……っ、なにそのかわいい表情!

ふわふわ揺れるプラチナゴールドの髪が相まってか、甘えたな子犬のように見えてくる不思議。



「ち、違いますよ。

わたしには、すっごくシスコンなお兄ちゃんがいて……そのお兄ちゃんが遊びに来るので、」



「俺のことは彼氏として紹介できないって?」



「っ、そんな言い方してません……!

彼氏ができたなんて言ったら絶対反対されるってわかってるから、知られたくないんです……!」




身振り手振り。

伝えれば、今度はなぜか楽しそうに「ふぅん?」と笑う彼。……おかしいな。嫌な予感がする。



「瑠璃ちゃん。

俺と付き合ってること反対されるの、嫌なんだ?」



「っ、な、」



そういう意味じゃない……!

っていうか、その"瑠璃ちゃん"呼び、完全にわたしのこと揶揄って遊んでるだけだよね……!?



「ぜひとも紹介してよ。

この間珠王さんにも、玄関前でしか挨拶できなかったし」



にこり。

微笑まれれば、さすがに「嫌です」なんて文句は言えなくて。



「……南々ちゃんに、聞いておきます」