そのなみだに、ふれさせて。




身をよじって、すがるように彼の首裏に腕を回して。

ちょっとおどろいたような顔をした紫逢先輩の瞳に甘やかな熱が浮かんでから、どれくらい経っただろう。



恋愛経験も交際経験も乏しいわたしは、ついていくので精一杯で。

きゅっと先輩の服を握れば、彼は「まずいな……」なんてつぶやく。



「何もしないってあけみに約束したんだけど。

……瑠璃が可愛すぎて、手出しそう」



「へ、」



「まじめに勉強しようか。

……これでも一応、ここ学校内だしね」



「え、あ、はい……」



確かにそうだった……!

誰もいないけどここ学校内なんだよ……!!ルノちゃんに不純異性交遊はだめって言われたばっかりなのに……!!




「特進の1年なら……俺が去年受けたテストと同じか。

内容はさすがに変えてあるだろうけど、範囲見る限り、なんとなく出そうな問題はわかるかな」



おとなしく勉強しようと教科書を開けば、わたしの試験範囲表に目を通した紫逢先輩がそう口にする。

……授業は受けなくてもサボりにならないけど、成績を保っているかの評価ができるよう、試験だけは受けなきゃいけない。



「……会長ってさ、」



わからないところがあれば、教えてくれるらしい先輩。

彼は彼で仕事をしているから、邪魔しないように静かに並んだ数式とにらめっこしていたら。



「……ほづみちゃんのことどう思ってんのかな」



かたかたとキーボードを叩く指先を止めて、紫逢先輩がふいに零した。

ほづみちゃん。……会長の、とくべつな女の子。



「どう思ってるっていうか……

そもそも、どこで知り合ったんだろ」