そのなみだに、ふれさせて。




お父様が倒れたなんて、間違いなくわたしより優先すべき事柄なのに……!!

勢いよく謝れば、彼はくすりと笑ってみせる。それからわたしの頭を撫でて、ちゅっとまぶたにキスを落としてきた。



……っ、なんでキス!?



「……大丈夫だって言ってるでしょ?

ほんとに大変だったら流石に俺も瑠璃のところに行ってあげられなかったし、むしろ、昨日の一件で親に瑠璃と付き合ってるの多少は認められたんだよね」



「そう、なんですか……?」



「うん。だから気にしないの。

……それより俺は、あっちの方が不安なんだよ」



ぼそっと。

紫逢先輩が何か言ったかと思うと、「瑠璃今日仕事する?」と首をかしげる。夏休みまでに終わらせなければいけない仕事も、まだ残っているし。



「あ、あの……

それよりも試験の勉強しなきゃいけなくて……」




ちーくんを頼れない今、自力でなんとかしなきゃいけない。

だがしかし、わたしたちの関係性が少しずつズレてきていることなんて知る由もないあけみ先輩は、「はやく行きましょ」とわたしたちを生徒会棟へ促した。



「あー……っと、あけみ。

俺、瑠璃とふたりきりになりたいから自分の部屋行ってるわ。何かあったら連絡してよ」



「あんた馬鹿?

それであたしが"いいわよ"って言うと思ってるの?個室に瑠璃とふたりきりなんて、瑠璃が食われる」



「さすがにそんなに手ぇ早くないし」



こそこそ。

紫逢先輩とあけみ先輩が何かを会話したかと思うと、「瑠璃に何かあったら許さないから」なんてどこか危険な場所に赴くかのような発言をするあけみ先輩。



それからわたしに、「身の危険を感じたら逃げて」と一言。

……身の危険を感じることって、早々ないと思うんだけど。



「じゃあ、俺らは行こうか。瑠璃」