「瑠璃、大丈夫?
もし途中でつらくなったら、家までおんぶして連れて帰ってあげるからね」
「ちーくんわたしに甘すぎだよ……」
「おんぶじゃなくてお姫様抱っこの方がいい?」
「そういうことじゃないのに……
っていうかお姫様抱っこは絶対やだよ!みんなに見られるしめちゃくちゃ恥ずかしいもん!」
というか、そこまで気に病んでないよ……!
会長に彼女がいないという言葉を完全に鵜呑みにしていたせいで、知らなくてショックだっただけ。
「そっか。なら、こうやって帰ろ?」
ふわり。
笑ったちーくんが、わたしの手を握る。
「……ちーくん」
昔からそうだ。
何かあるたび、ちーくんはこうしてわたしの手をぎゅっと握ってくれる。そのぬくもりに、いままで、何度も何度も救われてきた。
「わたしのことばっかり甘やかすから、
ちーくんってば、ずっと彼女できないんだよ?」
「できないんじゃなくて、いらないの。
それに、椛兄にも、呉羽兄にも、翡翠にも、瑠璃のこと頼むって言われてるんだからね」
よく知る名前を出されて、思わず苦笑する。
わたしの、お兄ちゃんたち。いろちゃんと呉ちゃんはもうとっくに成人して社会人。翡翠はわたしと双子で、ちーくんと翡翠は親友同士だ。
「変な男が瑠璃に寄ってきたら許さないって。
話す機会がある度にみんなに言われるんだから」
「みんな過保護すぎだよ……」



