そのなみだに、ふれさせて。




「気を遣わず出ればいい」



父親に言われて、とりあえず電話に出る。

時刻をちらりと確認すれば現在19時。……めずらしいな、こんな時間に電話してくるなんて。



「瑠璃。ごめん今、」



ちょっと取り込み中だから、と。

後にしてほしいと言おうとして、違和感に気づく。



『っ……紫逢、先輩、』



「瑠璃? ……泣いてる?」



電話の向こうから聞こえる声は、頼りなく俺を呼ぶ。

その間の堪えるようなそれは、聞くまでもなく涙混じりで。……頭の中が、一瞬白く染まる。




「どした? 瑠璃?」



『っ、ごめんなさ……っ』



「や、全然いいから……!」



本当は、何も良くないけど。

さすがに泣いてる瑠璃を放っておけない。ほかの誰かなら、最低なことにすこしは後回しにしたかもしれないけど。……あの子だけは、どうしても。



「瑠璃、今どこにいんの?」



震える声で伝えられたのは、「公園」という一言。

この時間に、ひとりで公園にいて、しかも泣いてる。……そんなの、放っておけるわけがない。



「わかったすぐ行く」