そのなみだに、ふれさせて。




会長の彼女は、わたしと同い年で。

しかも、この学校に転校してくるの……?



「ほづみ、もう帰ったのか?」



「うん、さっき門の前まで送ったよ。

お迎えの車が来てたから、それで帰っちゃった」



「お迎え……?

なに、まさか会長、ふたつ年下の金持ちと付き合ってんの? やだ、意外とがっつり肉食」



会話すらも、まともに耳に入らない。

そんなわたしの視界にひょっこり顔を覗かせたのは葛西先輩で、彼は小声で「平気?」と尋ねてきた。



「葛西、先輩……」



彼はわたしの気持ちを知ってる。

麻生はわかりやすいねって前に言われたから。間違いなく知っていて、優しい彼のことだから、きっと心配してくれているんだろう。




「瑠璃、顔色悪いよ。

……6限もそろそろ終わる頃だし帰ろうか」



「ちーくん、」



「そうそう。

麻生仕事頑張ってくれてたし、ちょっと休んだぐらいで間に合わないってことはないだろうし。……今日は萩原と一緒に帰りな?」



陽だまりみたいな優しい笑顔で言ってくれたちーくんと、ぽんぽんと頭を撫でてくれる葛西先輩。

ふたりの優しさにこくんと頷くと、本当に顔色が悪いのか、みんなに心配されたけど。



「じゃあ、お先です」



ちーくんが一緒だから大丈夫。

そう伝えてふたりでリビングを出ると、静かな生徒会棟の中を歩く。この学園は寮生活できる上に、生徒会役員には全員に個室が与えられる待遇の良さ。



だけどわたしもちーくんも、いつもお家に帰っていて。

個人部屋で生活しているのは、残りの4人だけだ。