困る、とわたしが言うより早く。
動いたのは会長で、彼はわたしの手を引いてすたすたと歩き始める。……本当に、なんだっていうんだ。
「あのっ、どこ、行くんですか?」
「ん? ……そう、だな。
人目を気にするのも面倒だから、生徒会棟の屋上にするか。今日はめずらしく天気も良いだろ」
「………」
いや、たしかに今日は天気もいいけど。
いつものように呉ちゃんが南々ちゃんとななみを迎えに来たのを見送ったあと、洗濯物を干してきたけど。
「……会長って、よくわかんないですよね」
たどり着いた生徒会棟の屋上。
わざわざ途中の自販機で会長お気に入りのミルクセーキを買って。付き合ってほしいと言われたのに、いざベンチに座ったら、わたしはお弁当を食べているだけ。
……会長はミルクセーキを飲んでるだけだし。
なにこの状況。ふたりきりなのになんだか全然喜べないし、ふいに、彼女の存在が頭をよぎる。
「それ、お前が言うのか?」
「お前が言うのかって……
会長ってよくわかんないじゃないですか」
むずかしい人だ。
むずかしくて、その言動にわたしが一喜一憂振り回されていることも、彼は知りやしない。
「そうか? 俺なんて単純なもんだろ。
……これ以上ないくらいにわかりやすい」
「しれっと嘘つきますね」
会長が単純なら、この世の殆どの人が至極単純だと思う。
……そうじゃないから、こんなにも、ぐらぐらさまよっているというのに。



