「ご、ごめんねなるせくん!
朝、あのまま放置してしまって……」
女の子たちから逃れて彼に謝れば、なるせくんは「大丈夫だよ」と言ってくれる。
その微笑みがちーくんとかぶって見えて、思わずぎゅっと手を握りしめた。
「むしろ、瑠璃ちゃんこそ大丈夫?
女の子たちに囲まれてたみたいだけど」
「うん、平気だよ。
……急に態度変えられたから、まだびっくりしてるけど」
「はは、女の子って怖いよね」
こそこそ。
ふたりで会話しているうちに、休み時間が終わってしまう。授業を受けようと、席についた。
そのタイミングでスマホが震えたかと思えば、『ごめん俺ちょっと今日学校戻れない』と紫逢先輩からのメッセージを受信した。
……"学校にもどれない"?
そういう言い方をするってことは、どうやら彼はいま学校内にはいないらしい。
どこに行ってるんだろうかと思いつつ、『了解です』と返事したところでちょうど授業がはじまった。
そういえば……
紫逢先輩って、生徒会棟の個人部屋に住んでるよね?
もどれないってことは、どこかに泊まってくるってこと……?
それってなにかあったんじゃ……? でも普通に連絡してきてくれてるから、大丈夫、かな……?
「麻生さん、お昼一緒食べない?」
「え、あ、うん。お邪魔じゃなければ……」
なんだか考え込んでいるうちに2時間分の授業を終えて、時刻はお昼休み。
女の子たちに誘われて、「じゃあバラ園行くー?」と切り出され、バラ園に向かうタイミングで。
一瞬にして、まわりがざわめく。
それもそのはず、普段は生徒会棟すらも出ようとしない会長が、本日2度目の姿を見せたからだ。



