そのなみだに、ふれさせて。




しかも重度のシスコンが3人もいるんだから……!!

万が一「彼氏ができた」なんて言おうものなら、すぐさま連絡してくるに違いない。……そういう理由もあって、好きな人の存在すらも黙っていたのに。



「別に言ったりしないよ。

……それに、言ったところで椛先輩は文句言えないよね。あの人、ちゃっかり彼女いるんだから」



くすくすと。

笑うルノくんの言葉に、ぽかんとする。



「え? ……え!?

まって、いろちゃん彼女いるの……!?」



ちょっとまって、聞いてないよそんなこと……!

ほぼ毎日のように電話してるのに、実は彼女いるってこと隠してたの……!?



「……あれ、知らなかった?

ってことはあの話もまだ聞いてないのか」



"あの話"……?

なにそれ、と首をかしげるわたしに、ルノくんは「なんでもないよ」と言ってみせるけれど。……そう言われてしまえばひどく気になってしまうわけで。




「教えてよルノくんっ」



「……俺が椛先輩に怒られるよ」



「黙ってるいろちゃんが悪いんだもんっ」



聞きたい!と。

わがままを言うわたしに、ルノくんは一瞬考える素振りを見せてから。俺が言ったこと秘密ね、と前置きして、わたしに詳しい話を教えてくれた。



「椛先輩……来年、かな。

公立中学の教師、やめるんだよ」



「え、」



「まだ、はっきり決めたわけじゃないみたいだけど。

……元教え子と、結婚するからね」