そのなみだに、ふれさせて。




「え……?」



「言ったじゃん、昨日。

自分から告白したのはじめてだって」



「あ、はい……」



こんなに女の子好きな彼がそんなことあるのかな……って、いま思えばちょっぴり不思議だけど。

たしかに昨日、彼はそう言っていた。



「だから、付き合えて浮かれてんの。

ごめんね。……瑠璃が可愛くて仕方ない」



ぎゅうっと。包み込むみたいに、抱きしめる腕の力を強める紫逢先輩。

目が合うとふにゃっと笑ってくれて、年上だとは思えないほど幼いその表情に、ドキッとしてしまう。



彼の手が、さっきとは違ってどこか意味深にわたしの頬を撫でる。

距離が近づいて。……まぶたを、閉じた。




「話し声がすると思ったら。

……堂々とサボりかな、ふたりとも」



ぴたり。

紫逢先輩の気配が止まったのがわかって、まぶたを持ち上げる。……くちびるが触れる、ほんの寸前。



「仕事のために授業免除なだけで、

イチャつくための授業免除じゃないよ?」



「ルノくん……」



この学園の、理事長。

彼は穏やかな笑みを浮かべて「なんだかひさしぶりだね」とわたしに言う。……たしかに、お互いに王学にいる割には、会うのがひさしぶりな気がする。



「あ、あのっ、ルノくん……!

いまの、お兄ちゃんたちには内緒にしてね……!?」



はっと、現状を思い出して慌てて彼にお願いする。

まずいまずいまずい。いくら合法だからって、学校内で授業を受けずに先輩とキスしそうだったなんて言われたら、まちがいなく怒られるよ……!!