そのなみだに、ふれさせて。




至近距離の、オッドアイ。

その距離の近さに気を取られて一瞬言葉の意味を噛み砕くことができなくて、先に頬が熱を帯びた。



き、キスって……!

さっきほっぺにちゅーされただけでも、めちゃくちゃびっくりしたのに……!



「だ、だめですっ。心臓止まる……」



「ははっ、大袈裟」



大袈裟じゃないよ……!

どきどきしすぎて心臓止まったらどうするの!?一生分の働きを終えちゃったらどうするの!?



「……だめ?」



紫逢先輩って、ぜったい、確信犯だ。

じゃなきゃ、そんな顔しないもん。……そんな甘えた顔したって、だめなものは、だめだもん。




「……もっと、俺にドキドキしてよ」



耳元で囁かれて、背筋がまた震える。

瑠璃って呼ぶ声がたまらなく甘くて、無条件にどきどきする。わたしが好きなのは、会長なのに。



「俺のことしか考えられなくなって。

……ほんの一瞬だけでも、いいから」



「紫逢、先輩、」



流されちゃだめなのに、流されそうになる。

苦しいのをわかってるから自分の気持ちに蓋をして、紫逢先輩に甘えたくなってる。



「あー……だめだ、ごめん。

わかると思うんだけど俺さ、浮かれてんだよね」



自分の中で、答えを導き出せなくて。

また無意識に黙り込んだわたしに、紫逢先輩は困ったような顔をして、そう言った。