耳を澄ます。 スタ…スタ… お母さんの歩いている音だ。 音の聞こえ方だと、まだ近くにはいないようだ。 焦りすぎて、涙もでなかった。 今日は、運悪くお父さんがいない。 会社のメンバーで昨日から旅行に出かけた。 もう、どうすればいいの…? 「ドコニイルノ…デテオイデ…」 少し離れたところで声がした。 いつもの、綺麗な優しいお母さんの声とは真逆で、 その声は低く、聞くだけで寒気がするぐらい不気味だった。 私は息を殺して見つかりませんようにと願う。