「いっそ決闘だったらいいのに………」


「俺喧嘩苦手なんだけど」


「見ればわかるよ」


ジロリと痩身の迷惑男を睨みつけて、教科書を詰めた重い鞄を突き出すと、ひょろ長いもやしっ子は不満そうな声をあげた。


「この美青年に荷物持ちさせるのー?意味分かんない!」


「これぐらいしてよ!私あんたのせいで何人に恨まれてると思ってるの!!!」


「え、この俺を顎で使うんだからこの世の女性全てでしょ」


「お気楽な頭はどこでネジ締め忘れたのかしらね、失敗作」


「怪力ゴリラ女は生まれた時点で失敗だよね」


「うるさい棒人間」


「暴力なっちはそのうちりんご潰せるようになっちゃうんじゃないの?」


「もう潰せるわ」


「えっ」



悪口を言い合いながら体育館を目指した。ペタペタと二人分の上履きの音が無人の校舎に響く。


幼馴染の静は私を便利な道具だと思っている節がある。

私の都合なんてまるで考えない。

自分に絶対的な信頼を寄せていることをわかった上での行いだから腹立たしい。