「転校生を紹介します」


季節外れの転校生は夏休みがあけた2週間後に突然やって来た。


「二階堂棗です、よろしくお願いします」


そう言ってふんわりと笑った彼女には見覚えはなかったけれど、既視感を覚えた。

細身で女子にしては高い身長。濡れ羽色の黒髪に黒曜石をはめ込んだようなアーモンドアイ。

日本人形を彷彿させる姿だったから、と言うわけではなく。

静の理想にぴったりの美女だったから。

横目で静を確認すると興味深そうに転校生を観察していた。

彼のその表情に胸の奥底がぞわりと波立つ。


静、ねぇ、こっち向いて。


寸前の所でその言葉を飲みこんで唇を噛んだ。