自分の手が震えている。これはきっと、12月の冷気のせいだ。


「トモキ、下手したら死ぬとこだったよ。両親の不仲なんて、トモキの責任じゃないじゃん。サンタクロースなんて、ただのおっさんだよ? 叶えてくれるわけないじゃん。もっと、子供らしいこと頼めばいいじゃん。おもちゃとか、高いスポーツ用品とか。クリスマスなんて、みんな浮かれてんだよ? 自分が楽しい気分になることしか考えてないんだよ? まだ6歳のトモキが、大人のことまで考えてやることないじゃん。そのおっさんに感謝するなんて変だよ、トモキ、ひどい目に遭ってたかもしれないんだよ」


声まで震えてきた。自分でも、何を言っているのか、何を言いたいのかわからない。


それでも、いろんなことが間違っているような気がした。


幼いトモキを利用しようとした空き巣のおっさんが、クリスマスにすら子供に気を配れないトモキの両親が、無垢なトモキが、ただ華やかであろうとするクリスマスが、みんなまとめて間違っているような気がした。


でも、その中で一番おかしいのは、わたしだ。


何で、こんなに取り乱しているんだろう? 何で、こんなに腹立たしいんだろう? 何で、こんなに胸が苦しいんだろう?


急に、震えていた手が止まった。トモキが握ってきたことに気がついた。


「俺、なんか、すげー嬉しい。いつも、俺ばっかり ちとせ のこと好きだと思ってたから。俺のことこんなに言ってくれて、すごく、幸せ」


わたしは、もうそれ以上、何も言うことができなかった。