『そうそう、絃に聞きたいことがあってね?』
さっきまでニコニコと楽しそうに話していたのに、サッと真面目な話に変わる。
「うん、なあに?」
『私たちもこっちの環境に慣れるのに時間がかかっちゃって今更って話なんだけど……絃、一人暮らしする?』
……え?
思いがけないお母さんたちの提案に、私の思考がストップする。
「……一人、暮らし」
そう私が言葉を漏らすと、同じリビングにいた3人が私の声に耳を傾けた。
『そう。私の友達の家も男の子ばかりでしょう?もしかしたら窮屈かもしれないと思って……』
「もう、遅いよっ!」
『絃……ごめんね』
お父さんの海外行きが決まって、私が佐伯家にお邪魔することになった当時は、本当に嫌で今すぐ抜け出したくて……
でも、住むところがなくなっちゃったから頑張って居候させてもらって。
その頃の私なら、今すぐうんって言ったと思う。



