「じゃ、じゃあ葵くん、前向いて?」
「はい」
くるりと体勢を変えて、乾かしてもらうのを待っている。
葵くんが前を向いたのを確認して、ドライヤーのスイッチを入れる。
ブォーッという音をたてて、葵くんの髪に温風を当てていく。
「熱くない?」
「うん、大丈夫だよ」
男の子の髪は短いから、私とは違ってすぐに乾いていく。
サラサラだな、葵くんの髪。
ドライヤーの電源を切って、クシを通しながらそう思う。
「終わったよ?」
「ありがと、絃ちゃん」
終わったと伝えた途端、振り向いてニコリと笑う葵くん。
「ねぇ、絃ちゃん……」
そう思えば、突然悲しげな表情を浮かべた。



