「ちっ」
「蓮くんのばかっ」
兄である雅さんには逆らえないのか、すぐに離されたその手。
自由になった口で、思いっきり嫌味を込めて言ってやった。
「大丈夫だった?絃ちゃん」
「はい、ありがとうございます」
優しすぎる雅さんに、私は涙が出てきそうだよ。
……と、そう思ったのも束の間。
「俺のこと好きになってくれたらいいのに」
「っ!?」
眉を下げながら、悲しげな笑顔を向けてくる雅さんに私のドキドキは止まらない。
雅さんのずるいところだ。
そうやって不意に私の心をかき回していく。
「待ってよ、雅兄!蓮兄!!僕の絃ちゃんはあげないよ」
あ、葵くん!?
葵くんまでなんてこと言い出すの!?
僕の絃ちゃんって……
私はいつから葵くんのものに。
この3兄弟には、驚かされてばかりだ。
それも私のことをドキドキさせるというやり方で。
だから毎日心が休まらない。



