今度は尊くんがわたしに近づいてきて

そう、顔が見えたのは一瞬で


すぐに耳元で……


「……好きだよ、千湖」


甘い囁きにくらっときた━━━。


これは本気の好きじゃない。
きっとわたしへのお返しだ。


それなのに……
まんまとその甘い囁きに溺れそう。


そんなわたしをジーっと見た後
クスッと笑って


「……って言ったらどうする?」


ほら、こんな意地悪なこと言うんだから。


「い、意地悪……っ」

「先に仕掛けてきたのは千湖でしょ?」


そ、それはそうだけれども。



「ほんと尊くんってよくわかんないよ」

教えてよ、全部。


「……わかんなくていいよ」

「え?」


「……そーやって僕のことで頭いっぱいになりなよ」