少しでも早く教室に戻るため、ほとんど小走りに廊下と階段を進む。

そしてちょうど、2階の床に下り立ったとき。



「……ッ、」



何の前触れもなく、ぐら、と視界が揺れた。

とっさに、すぐそばにあった手すりを掴んでもたれかかる。



「ッはあ、は……」



耳鳴りがする。呼吸が乱れる。

今までもう何度も経験した症状が、体を襲った。



『……いるよ。もーずっと、片思い』



……ああ、なんて自分の体は、弱く情けないんだろう。

奏佑先輩のこと、あきらめなきゃって。でも簡単には、できそうになくて。

それで一晩中悩み抜いて眠れなかった結果が、このざまなんて。



「……う、」



本格的に視界がぼやけてきて、手すりにすがりついたままガクン、と床にひざをついた。

ああ、まずい、倒れちゃう。

必死に意識を保って、呼吸を整えようとしていると。