「あっ、そうだ。今度新しくできたカフェ、一緒に行こうよ」
「うん、いいよ」
笑顔で頷いた私はウソをついた。
学校の中でぼっちになるのは嫌だけど、プライベートまでこのオトモダチと過ごしたいとは思わない。
私は家に帰って、また人には語れない夢を追いかける。オトモダチごっこしてる暇はない。
そんな自分は酷いトモダチだと思う。そんなの分かってる。良いご身分だと皮肉られても仕方ない。
でも、まだ止められない。
諦めきれない。
きっと、私が完全に大人になってしまうまで。
「お前らー、座れよー。ホームルーム始まるからなー」
先生が教室に入ってきて、私のオトモダチは私に手を振った。私も振り返した。前に向き直る。
ああ、今日の最後はホームルームなのか。
「じゃあ、三年の新学期も始まったことだし、そろそろ役員決めようと思う。まあ、前のメンバーでいいなら俺はそれでいいぞ」
そう、この学校は二年から三年になるとき、クラス替えはない。新しいオトモダチを作るのは正直面倒だったから、それは私にとって朗報だった。
そんなわけで案の定、
「じゃー俺、この間と同じ副議長やりたい」
そう言い出したのは斎京也。
「えー、なにそれ。京也いっつも副じゃん。そんなにやりたいなら議長やんなよ」
「やだよ。副だからいいじゃん」
「うわー、グズ」
「副議長って、実際は係よりも仕事ないしねー」
そう周りは批判してるように言うが、実際はただの軽口。みんな笑顔で斎京也が副議長やることに不満は無さそうだ。
ちなみに私も不満はない。こういうのはやりたい人が勝手にやればいいんだ。


