「うん、こんなもんか」
昔とは違って、私はもう三割の本当と七割の綺麗事を並べただけじゃ満たされない。
次から次へと溢れ出す感情を吐き出さないと満たされない。
でも、それではダメなんだって分かってる。
だから、何回新人賞に応募してみても、一次審査さえ通らない。
でも、自分の書き方がダメなんだって分かっていても、本当はもう、どうすれば良いのか解決策が全然見えない。
きっとそういうところが才能の無さなんだろう。ちゃんと分かってる。
だから、この夢は、このノートは誰にも見られちゃいけない。
才能がないのに、こんなことやってるなんて、そんなカッコ悪いこと知られるわけにはいかないんだ。
「んじゃ、今日はここまで」
夢中で新作のプロットを書いていたら、チャイムが鳴って、先生がそう言った。
急いで、黒板に書いてあるやつを数式を書き写して息をつく。
「ちゃんと終わった?」
タイミングよくかけられた言葉。同じ階級のオトモダチ。
「うん」
私は小さくピースを作って笑って見せて、ノートをしまった。
ただのオトモダチにこのノートを見せる勇気はない。


