男女七人夢物語



「わりーな。今まで」


「俺のせいだよ」

「悪いことしてねーだろ、武は」


「いや。やっぱり俺はキャプテンには向いてない」


「自信持てよ。俺じゃなくて別の奴だったら、お前ももっと上手くやれたし、俺もお前だから甘えてしまった。それだけの話だ」


そうだろうか。


京也は俺に甘えていただろうか。


むしろ、今思えば俺がしたことは京也にとってただのプレッシャーだったのかもしれない。


何が正解か、もう分からなかった。


ただ、一つ言うなら、


「俺は京也と一緒じゃなきゃ楽しくねーよ」


京也からすれば、野郎に言われても仕方のない話かもしれない。


けど、野球は俺にとって京也との時間そのものだった。


甲子園も、京也が行きたいと言ったから目指していただけだし、野球部も京也に誘われたから入っただけだ。


辿っていけば全てに京也がいて、それは野球だけじゃない。


友達も、京也がいい奴だと言えばそうなんだろうと思ったし、高校はここがいいと言えばじゃあ俺もと。


そうやって、京也の敷いたレールを走ってきた。


依存なのかもしれない。


恋愛感情じゃないし、変なことかもしれないけれど、京也は特別だった。どこまでも着いていきたい奴だった。
なのに、京也が目標を失ったら、俺はどこに行くんだろう。


不安だった。だから、京也を戻そうと躍起になっていたんだと今なら分かる。


だから、メンバーも不安に思ったんだ。キャプテンがスタメンを放って補欠にうつつを抜かしていると。


「………武、お前は俺がいない方が上手くやるよ。楽しいか楽しくないかの問題じゃない」


「部活なんて楽しくなきゃ意味ない」


「ある。いいか、お前は少し俺と離れて部活をちゃんと見ろ。俺のことなんか放っておけ」


「でも………」


「お前が俺をキャプテンと仰ぐなら、キャプテンだと思ってこれには従え」


「………わかった」


結局、その日京也がユニフォームを着ることはなかった。