男女七人夢物語



明日、話さない確率の方が高いクラスメートに告げるその言葉は、なんだか空々しい。


そして、そんなこと思った自分に驚いた。


そんなものは今まで気にしたこともなかったと気づいて。


変に吹っ切れている木下相手だからこそ、そう思ったのかもしれない。


そう結論付けて逃げるようにして去ろうとした。


その時だった。


「ありがとう」

その小さすぎて空耳かと疑うような言葉を聞いたのは。


「何が……?」

思わず足を止めて聞き返すと、返ってきたのは、


「謝罪じゃなくて、感謝がほしい」


「は?」

「だから………悪かったじゃなくて、ありがとうって言うなら言えば?」


俺は口をあんぐり開けたまましばらく動けなかった。


今、こいつは何て言ったんだ。
なんなんだろう。こいつは。木下の思考回路が全く理解できない。


つまり、あの“ありがとう”は向けられた感謝ではなく、「お前のせいなのに脚本引き受けてやったんだから、自己満足の謝罪なんて吐く暇あったら、“ありがとう”ってちゃんと言えよ、このやろう」という強要だったわけだ。


なんだか、騙されたような気持ちになった。木下にお礼を何にせよ言われたかもしれないという期待。それに振り返ってしまったことがバカみたいだと思った。


だから、

「言わないよ」

そう言った。


振り回されるのは趣味じゃない。