「ん?」

「前から思ってたんだけど」


その前置きに、僕は内心焦った。


まさか、僕の行動に気づいてしまったのだろうか。


気持ち悪いからやめろと、そう言われるのを覚悟したとき、


「本の趣味、似てるよね」


と、やはり言われた。心臓がドクドクと跳ねる。


「そっそうかな?」

「うん。これ、私もちょっと前に読んで………」


はたと気がついたようにそこで木下さんは言葉を止めた。


バレたか。
僕は観念した。


こうなったら、自白しよう。


「えっと」

「ごめん!」


言いかけた何かは、木下さんの謝罪に遮られた。


ごめんって、なんの謝罪?

もしかして、この瞬間僕は呆気ないほどに振られたのだろうか。


困惑した僕は、何を言うのが正解か分からなくて、


「………どうして、謝るの?」

と、素直に聞くことしかできなかった。


「えっと、あの私が井上くんの本の趣味を知ってるのは、井上くんがいつも借りていってくれるからで」

「うん?」


「私は、井上くんのストーカーとかじゃないけど、嫌だったらごめん」




………誤解で謝らせてしまったけど、バレたらストーカー認定されるのはよく分かった。