クラスでの学校祭は思いの外上手くいった。


それもこれも木下雪乃がなぜか脚本を引き受けたからだ。さすが、一葉姉。


木下雪乃が書くことについては、みんな意外に思ったようだが、異論はなかった。

まあ、一葉姉が『異論があるなら、自分が書く覚悟を持ってしろ』なんて言ったら、誰も声を上げるはずがない。


もちろん、木下雪乃も。


あの日は木下雪乃のことを考えず、無神経にあんなこと言って悪かったと思ったが、こうなればただの杞憂だろう。

そんなこんなで、クラスの出し物はとりあえず劇に決定し、内容は色々な意見が出たが、まあその意見を参考にしつつ、木下雪乃が書いてくれればいいとのことでまとまった。


つまり、木下雪乃に丸投げである。


まあ、変な注文がある方が書きにくいかもしれないから、それでいいんじゃないかと俺も思う。


そして、あっという間に放課後だ。


「京也」

ノロノロと鞄に教科書を閉まっていると、聞き慣れた声が上からおちた。

「んー」

適当に返事をしてやると、最近よく言われるようになったその言葉をくれる。


「早く着替えろ」

分かってるよ。そんな不機嫌な顔すんなって。


そう言いたいのに俺はのらくらと、

「なーに、カリカリしてんのー野球部エースの佐山武くん?」

そう返してしまう。



そんな俺を許してほしい。