彼と出会ったのは中学一年の春。
クラスが一緒だった。彼は今と同じクラス委員長。その頃から明るくて、リーダーシップのある男の子だった。
そんな彼に近づきたくて、私はその後期からやったこともないクラスの副委員長に立候補した。
彼の役に立てるのは嬉しかった。
もっと、もっと彼に近づきたくて、気がつけば彼を通り越しみんなの姉貴になっていたのだ。
その間に彼は一人の女の子と付き合い、別れた。
その時に私の初恋は終わったはずだった。
はずだったのに、彼は二週間でその女の子と別れ、委員会の後私に“やっぱ一葉は気が利くよな”と、何気なく私に言ったのだ。
誰と比べて?
私にも可能性があるのか。そう思ったら、その時からいつのまにか二度目の恋が始まった。
バカな私。
もう、本当に終わっちゃったよ。
「………努力する方向、間違ったなー」
濡れる頬を誤魔化すようにそう言う。笑うなら笑って欲しかった。
なのに、
「本当に?」
優しいのに不思議なほど芯のある声は、私を笑ったりはしなかった。
私は何も言ってないのに、全てを知って言ってるようなような口調。
「いとちゃんを駄目にするなら、それは必要のないものだよ」
知った顔で、そう言い切る。
嫌な感じはしなかった。
それがまた悔しくて、私は目元を拭う。前に向き直った時、井上奏太は迷うように口を開いた。
「こんなこと言うのは不本意だよ。でも、いとちゃんが聞きたいなら___」
「木下雪乃にこだわる理由?」
こっくりと頷く井上奏太に私は困った。


