男の子にしては少し高めの声。優しい人だ。
分かってる。
でも、その声音であやされるようにされたら、私のくだらない矜持に傷がつくんだよ。
「………変ってなに?」
こんなこと言いたいわけじゃない。
「私は私だ」
「うん、ごめん」
「嫌だ」
「うん」
ただ頷く井上奏太がなぜかだんだんぼやけていく。
「私は私だ。でも、なんでっ。なんで可愛くないんだろ。私___」
分かってる。
彼と会ったのも、好きになったのも私の方が先だけど、そんなもの大した意味はないってこと。
彼女がフィッシュボーンの可愛い髪じゃなくても、私が二人の仲を取り持たなくても、いつか今日という日がやってきた。
私と比べるまでもなく、彼は彼女を選んだ。
でも、
「私の方が可愛かったら………?」
話しかけるだけで真っ赤になって、ドジで、一人じゃ何も出来ないような可愛い子だったら?
「そんな仮定、必要ないよ」
「なっ」
「いとちゃんは、可愛い自分で甘んじる人じゃない」
「それは………」
そう言われて不意に思い出した。
最近は二人の仲に嫉妬して、自分の中に彼女のような可愛さを求めていたけど。
けど、最初はそんなんじゃなかった。
私の恋は努力でいっぱいだった。


