男女七人夢物語





男の子にしては少し高めの声。優しい人だ。
分かってる。


でも、その声音であやされるようにされたら、私のくだらない矜持に傷がつくんだよ。


「………変ってなに?」

こんなこと言いたいわけじゃない。


「私は私だ」


「うん、ごめん」

「嫌だ」

「うん」


ただ頷く井上奏太がなぜかだんだんぼやけていく。


「私は私だ。でも、なんでっ。なんで可愛くないんだろ。私___」


分かってる。

彼と会ったのも、好きになったのも私の方が先だけど、そんなもの大した意味はないってこと。

彼女がフィッシュボーンの可愛い髪じゃなくても、私が二人の仲を取り持たなくても、いつか今日という日がやってきた。


私と比べるまでもなく、彼は彼女を選んだ。


でも、

「私の方が可愛かったら………?」


話しかけるだけで真っ赤になって、ドジで、一人じゃ何も出来ないような可愛い子だったら?


「そんな仮定、必要ないよ」


「なっ」

「いとちゃんは、可愛い自分で甘んじる人じゃない」

「それは………」


そう言われて不意に思い出した。


最近は二人の仲に嫉妬して、自分の中に彼女のような可愛さを求めていたけど。

けど、最初はそんなんじゃなかった。


私の恋は努力でいっぱいだった。