いつもの笑顔なのに、どこか張り付けた笑顔に見えるのは、私だけなんだろうか。
あの男子は本当に斎京也が仕事できないと指摘しただけなんだろうか。
私にはそうは見えなかったけど。
「じゃー、二人よろしくな。今日は何やるかまで決めて欲しいから、仕切ってくれ」
「はい」
「しゃー、やってやろーじゃん」
私はクラスが盛り上がっている中、ちらりと不服げに座った男子を見た。
未だ斎京也を睨みつけている彼は、斎京也と本当は仲が悪いのだろうか。
何か物語の匂いに私はつられてペンは止まったままだった。
「お化け屋敷は定番過ぎるかな?」
「だなー。去年は喫茶店だったし」
「飽きたよなー、喫茶店は。てか、食い物屋ばっかりだし」
好き勝手にしゃべる教室。前に立った二人は、何を言うわけでもなく時々相槌を打ちながら、話を聞いているだけ。
でも、そこは二人特有の包容力があるからか、安心できる。
私はまた顔を下げた。
思考の海に沈む。書きかけの文のあるページは一旦放っておいて、次のページを開いた。
新しい何かが生まれるような気がして、さっきの意味深な会話から何か生まれないかと考えながら、空欄の鍵かっこを作る。
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「 」
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そこに入る言葉を探したけど、何だか筆が乗らない。
諦めかけたその時、不意に呼ばれる声がした。
「そうなの、木下さん?」


