「よーし、今日は学校祭のこと決めるぞー。まずクラスで学校祭プロジェクトリーダー二人、やってくれる奴いるかー」
五月下旬のホームルーム、先生はそう言った。
毎年思うことだけど、七月上旬の学校祭の準備を五月の今から始めるって、いくらなんでも早すぎる。
しかし、特に不満があるわけじゃない。
大体不満を言えるような人間じゃない。私は相変わらずノートに文字を書き連ねていて、あまり聞いてないし。
受験生、という言葉を意識するのもまだ先でいいと思う。
夢を諦めて、大人になるのも。
「それなら一葉姉さんでしょ」
クラスの誰かがそう言った。当然の流れだった。
「だなー。いいか、一葉?」
「はい」
今日も今日とて前の席の子の髪をアレンジしている一葉が先生の方を見ずに答える。
「じゃあ、男子からも一人やってくれる奴いないか?」
「はいはーい」
「おっ、京也か。やってくれるか?」
「おっしゃー、まかせ___」
「京也、お前っ!」
机を叩く大きな音。
突然、クラスがざわついた雰囲気から一転して静まりかえる。
さすがの私も顔を上げると、あれは……そう、確か野球部キャプテンで、斎京也が特に仲良くしてる男子その男子が、立ち上がって斎京也を睨みつけている。
なんかの修羅場?
迷惑極まりないが、面白そうなので見守ることにする。
「………んー、なにー?」
斎京也は笑顔こそ崩さなかったが、いつものふざけたものとは違って、何だか周りを黙らせてしまうような、そんな笑顔だった。
「お前はっ…ダメだ」
何か言いたいことがあるのに言えないという風に、野球部キャプテンの男子が顔を歪める。
その表情に答える斎京也という奴は、やっぱり笑って答えた。
「えー、いいじゃん?大丈夫だって。一葉の姉御がいるんだからさ。あれだよ。副議長と同じ」
「そういうことじゃ____」
「俺がやりたいんだよ」
ぶつかり合った目線が、織り成す熱い感情を直に浴びている気分にさせた。
「俺にだってできるからさ、な?」
「…………」


