「んー、じゃ。あと残ってるのは………」
重役や女子の体育委員から決まったせいで、あとはスムーズに決まっていった。
私が出る幕なんて勿論無く、私はただの国語係になった。提出とかあまりないから正直何もない係と言っていい。
私はホッと息をついた。
「んーじゃ、また明日な。勉強しろよー」
放課後になって、私は誰かとしゃべることもなく、図書室に向かった。
私は部活もやってないし、委員もやってないが、図書局員である。
そして、今日はそのカウンター業務があるのだ。
まだ誰もいない図書室にオープンの札をかけて、私はカウンター内の椅子に座り、ノートを取り出した。
プロットは六割くらいは完成していて、まあまあな設定だと自己評価する。
あとは___
「すみません」
私は現実に引き戻されて顔を上げると、そこにはクラスメートである井上奏太がいた。
「あっ、えっと返却?」
「………これ借りて、これ返す」
彼は左片腕だけを使ってそれぞれを示した。
「分かった。ありがとう」
「ん」
彼、井上奏太は唯一うちのクラスで図書室の常連である。別に仲良くはないけど、借りてく本を見てる限り、本の趣味は合いそうな気がする。
話してみたい気がするけど、私はずっとそれを出来ていない。
どうしても、彼を目の前にすると気後れしてしまうから。
「はい」
返却処理をしてから、貸し出し処理をして、彼に本を差し出す。彼もそれを左手で受け取った。
「ありがとう」
だけど、彼が私に右腕を差し出すことは絶対にない。
もっと言えば、彼の右腕はもう一生動くことはない。
彼の右腕は麻痺している。


