ああ、もう無理だな――と、不意に悟った。

頑なに目を背けていた気持ちが、堰を切ったように溢れ出す。

注意力散漫で仕事が手につかなくなるほど、食欲も湧かず中々寝付けない日々を過ごすほど、白い影を見た気がして思わず追いかけてしまうほど――求めていて、会いたくて、寂しかった。

認めないと言い張るには、もう限界なのだ。

本当は、もっとずっと前から――。


「なんか……負けた気分だ」


なぜだか得意げに笑う彼女の顔が頭に浮かんで、謎の敗北感に苛まれる。

そろそろ戻るかと足を止めると、顔の前を白いものが横切った。

見上げれば、雪が次から次へと落ちてくる。

ふわふわと大きいその雪は、きっとまた積もるのだろう。

鼻先にふわりとのった雪が、彼の熱ですぐさま溶けて消えていく。

儚くて、淡くて、白くて、冷たくて――やっぱり雪は、彼女に似ていると思いながら、彼は踵を返して歩き出す。

今日は、久しぶりに公園の中を通って帰ろうと思った。

彼女との出会いの思い出にちょっぴりだけ浸って、それから家に帰って温かいお茶でも飲もうと。

久しぶりにお腹いっぱい食べて、疲れたけれど楽しくて、ついに自分の気持ちと向き合った今なら、よく眠れそうな気がしていた。