「どうしたの…柊くん」


「別に…」


「えっ、」


別にって…急に腕を掴むなんて、別にで片付けられるわけないって。


腕を掴んだままの柊くんと掴まれた私のことを、教室に帰ろうと玄関に向かう生徒たちがチラチラとみる。


恥ずかしいって…。


「安静にしてなきゃダメじゃん」


「あ、大丈夫だよ。結構眠ったし…」


先生からお薬ももらって飲んだし、全然平気になっている。


だけど柊くんの顔はまだなんだか不服そう。


「…柊くん?」


「…増田」


「えっ、増田くん?がどうしたの?」


突然増田くんの名前を出した柊くんに彼の名前を聞き返す。


「っ、…いや、ごめん。なんでもない」


柊くんは少し黙って頭をかくと、ゆっくりと手を離してくれた。


でもその瞬間、


離されたのがちょっぴり寂しくて。


胸がまたドキンとなった。