目の前にはいつもの教室が広がっていて、カエルも山本さんも、もちろんカッターナイフだってない。


それでも、俺は自分の手のひらを見おろした。


今見た幻覚が俺の悪魔の正体なのではないか。


潜伏している黒い感情が見せた幻覚は、あまりにもリアルで気味が悪かった。


「悪い。ちょっと保健室に行ってくる」


それはそう言い、教室を出たのだった。