「澪、また動画見て遅刻?」


その鈴のような愛らしい声に一瞬ドキリと心臓が跳ねたが、それを隠して振り向いた。


そこにいたのはクラスメートの長尾沙希(ナガオ サキ)だ。


スラリと手足が長く、癖のない栗色の髪は真っ直ぐに胸まで伸びている。


色白でクリッとした大きな目にプックリとした富士山形の口には色気を感じる。


俺の好きな人。


が、もちろん俺がどんな動画を見ているのか言っていない。


言えば当然嫌われるだろう。


「おう。また見るか?」


ポケットからスマホを取り出すと、沙希の表情が緩んだ。


「見る!」


そう言って可愛らしく近づいてくる。


俺は動画サイトを表示して動画を再生させた。


以前沙希にどんな動画を見ているのか聞かれた時に、咄嗟に動物動画のサイトに登録したのだ。