「…まだですか。」



苛立ちを一切隠さない鋭い声が飛んできた。
忘れてた…なんてことはないけど、
忘れたかったのは事実だよね。


一通り着替え終えたし、問題ないかな。



「終わりましたー。」

「…なら、早く言え。」



ガチャりと入ってくる。
クエンは棒立ちしている私を上から下まで眺めると、
フンっ満足そうに鼻を鳴らした。



「さすが私だ。サイズはピッタリのようだな。」

「……よく言うよ…。」



小声で呟く。



「…何か言ったか?」

「…いーえ。」

「髪は…そのままでもいいか。」

「え、いいんですか?黒髪はクエンもだけど、結構長いよ?」



そう言って背を鏡に向けて確認すると、
腰に届かないくらい長いストレートの髪が見える。
さすがにこれは女の子ってバレるんじゃない?