「わたしが、
さおに何されたかわかってるんでしょう……?」
「なにその言い方。
マーキングされたの、同意なわけ?」
「っ、わたしは……」
もういっそのこと、衣沙が好きだって言いたい。
でもだめ。いま気まずくなったら、きっと結婚する衣那くんと満月ちゃんのことまで心配させてしまう。
せめてふたりが幸せになるまでは、言えない。
ふたりにはちゃんと、笑ってて欲しいから。
「っ、キスされたくなかったの……!」
もう長い片想いだ。
いまさら衣沙に、期待なんてしてない。
それでも。
嫌いになんて、なれるわけもなかったから。
「くちびるにキスされるのだけは嫌で……
だからせめて、って、」
ぽろっと、涙がこぼれる。
感情が昂ぶるとすぐに涙があふれるタイプの人間だから、あんまり強く言いたくなかったのに。
「なるみ、」
「うるさいもういい……っ」
わかってくれなくていい、と。
わたしが泣いていることに気づいた衣沙に掴まれた腕を振り払おうとした、その瞬間。
「なら。
……その努力、俺がぜんぶ無駄にしていい?」



