ふふっと笑うさおを、思わずぎゅっと抱きしめる。
そうすれば照れたように笑うから、さらにきつく抱きしめてしまった。
なんてかわいくて素直な後輩なんだ。
この可愛げをほかのヤツらにもわけてやりたい。主に霧夏の現トップに。
「さお大好き……!」
「俺も好きですよ、姐さん」
抱き合ってたら、まわりから揶揄いの声が飛んでくる。
だけどそれを無視して存分に彼を抱きしめてから離れると、余り物の中からパスタを選んで電子レンジであたためを開始した。
たまり場は何気に快適だ。
家の中をすごく広くしたみたいに一通りの機能は揃っていて、2階には部屋が3つ。
ひとつは、トップ専用の部屋。
霧夏は歴代にトップがひとりだけで、今は8代目。いうまでもないが衣沙のことだ。
本来なら、トップしか入れない部屋。
だけど彼は普段ここに来ないから、もはやトップの部屋はわたしの部屋となっている。
そしてもうひとつは応接室で、残りは看護用の部屋。
よくある保健室を模して作った看護部屋は、当然ながらあまり使いたくはない。
「いただきまーす」
1階は、とてつもなく広いリビングだと思ってもらえばいい。
なぜかキッチンやお風呂にお手洗いまでついていて、本当に快適空間。夜には施錠して帰るけれど、寝室さえあれば普通に住める。
みんなが普段いるのはリビングで。
ゲームしていたり話していたり、課題をやっていたり。それぞれ自由に過ごしているのを横目に、パスタをもくもくと食べはじめる。
百はゲームに混ざりに行ってしまったけれど、わたしのそばに腰を下ろして話に付き合ってくれるさお。
少々周りのみんなよりも大人びている彼は、いつもこうやって落ち着いていて。
「……、どうしたんですか?」



