「だって俺の手払ったじゃん。

……ごめんって言ってたし、告白されてあいつに揺らいでんのかと思って」



「……? ああ、違うわよ。

ごめんって言ったけど、そうじゃなくて」



なるみが俺の髪から手を離して、顔をのぞきこんでくる。

まっすぐ見つめられたら、触れたくなる。



「さおと、先に約束してたのよ」



「……は?」



「ほら、衣沙がその日空けて欲しいって言ったから、わたしさおに予定ずらしてもらったでしょ?

だから、そのお詫び。さおが一緒にご飯食べたいって言うから、じゃあ一緒に食べようって」



「………」




……は? ってことは、なに?

最初っからあいつと飯食う約束してたってこと?



「でも衣沙に言ってなかったこと思い出して、

あの場でごめんって謝ったんだけど」



なら、愛想つかされた云々は、まわりと俺の勝手な想像で。

なるみはただ、あいつとの約束を守っただけ?



「なんだよそれ……」



心配して損した。

ってことはあいつのことを好きになったんじゃ、とかいうのも、俺の勝手な被害妄想?



「それより、また女の子と遊んでたの?」



そんな身勝手な被害妄想でやるせない気分になって遊んでた、とは、なるみに言えるわけもなくて。

純粋な瞳を向けてくる彼女に、「誰かから聞いた?」と尋ねれば、ふるふると首を横に振る。