「姐さん、昼なんか食べました?」
「ううん? 食べてないけど」
「なら、コンビニで買い出しした分残ってるんで好きなのどうぞ。
どんぶりとかパスタとか、いくつかありますよ」
「ほんと? じゃあもらう」
シルバーの髪に、黒縁メガネ。
制服は着崩していなくて比較的真面目に見えるけれど、彼も霧夏の一員だ。本名は、月宮さお。
名字に月がつく上、まるで月光みたいなその髪色が綺麗で、みんなは彼のことを「ツキ」と呼ぶ。
ちなみに彼に霧夏のことを教えたのも、霧夏に連れてきたのもわたし。
だから必然的に、さおはわたしが一番可愛がっている後輩だ。
1つ年下で、今年から高校生。明日、わたしや衣沙の通う高校に入学する。
「はいこれ、どうぞ」
「え、なにこのチョコレートとミルクティー」
「姐さん、これ好きでしょ?」
さおから手渡されたチョコレートとミルクティー。
どちらもコンビニで買えるものだけれど。箱入りのチョコレートは、金紙にひとつずつ包装されているもので、ちょっと良いやつ。
たしかに好きでよく食べているし、ミルクティーに関しては毎日のように飲んでいる。
両方とも、わたしの好物だ。
「わざわざ買ってきてくれたの?」
「買い出しのついで、です」



