なんであんなに可愛いの……?

ちょっと赤くなる頬とか、よく潤む瞳とか、うれしそうに笑う顔とか。何もかもがかわいい。



っていうか冗談抜きで、

なるみより可愛いと思った女の子がいない。



「なるみのこと考えてる時の衣沙ってさ、

なんかものすっごい甘い顔してるよね」



「冷静に見てんじゃねえよ恥ずいわ」



ベッドにごろんと寝転がって、枕を抱える。

……花見中だって、女の子を口説きながらも、ずっとなるみのことばっかり見てた。ツキの告白を遮ったのだって、もちろん偶然じゃない。



「……あのさ。

満月ちゃんが死ぬほど可愛く見える時って、どうすんの?」



ちらりと。

目線だけ持ち上げて兄貴を見れば、呑気に俺の本棚を物色してる兄貴は、キャスター付きの椅子を器用に使ってくるりと振り返る。




「常に満月は死ぬほど可愛いよ?」



「……わかった。勝手に死んでて」



「うそうそ、冗談だって。

……かわいい時は、手出しちゃえば良いよね」



あ、ダメだ。この人ダメな大人だった。

真面目に見えて意外とあれだ。うん。バカ。



「出せてたら苦労してねえよ……!」



幼なじみとすら認めてくれないなるみにキスしたら俺の今後は地獄へ一直線。

フラれて気まずくなるなら、このままの方がいいって、何度も何度も思ってる。



それに。……フラれたら逆に振り切れて、なるみのことをめちゃくちゃにする気がする。

あの時守ってやったはずなのに、他でもない俺が、なるみを傷つけて泣かせる気がする。