心底うさんくさい。
……兄貴って、実は性格良くねえよな。
「結構ですお帰りください」
「あ、夕飯になるせ来るよ?」
「なんでだよそこはなるみ誘えよ」
言っちゃアレだけど、なるみは本気で男を見る目がないと思う。
いや、満月ちゃんは兄貴の高校時代を知ってるから別にいいけど、なるみは霧夏のトップだった頃の性格の悪さを知らないから、好きでいられるだけで。
ほんとの顔を知ったら……って、あれ。
ほんとの顔を知ったら、もしかして……
兄貴に対して、幻滅したりするんじゃねえ?
「衣沙いま悪いこと考えたでしょ?」
「兄貴がなるみに嫌われる方法を考えてたんだよ」
「ソレ悪いこと以外の何物でもないよね?」
……だって、なるみは兄貴のこと好きだし。
俺だって出来ることならそんなことはせずに好きになってほしいけど、好きな相手っていうのはやっぱり大事なもので。
「あ~、もう……なるみが可愛くて死ぬ……」
「『なるみが可愛くて手出したい』の間違いでしょ?
都合良く言い換えちゃダメだよ、衣沙」
うるせえ。俺の心の中読むなよ。
そりゃあ俺だってできるならイチャイチャしたい。むしろイチャイチャだけじゃ足りない。今日のお花見だって、うっかりキスしなかった俺を褒めて欲しい。