【完】姐さん！！

「……なら、よかった」



大事なことを見逃していたのかもしれないと焦った。

気にしすぎだったことに気づいて、ほっと肩の力を抜く。ふにゃりと情けなく笑ってみせれば、衣沙の指先がするするとわたしの頬を撫でた。



それがくすぐったくて肩を竦めたら、衣沙がふいに瞳をゆるめる。

砂糖菓子みたいな絶妙な甘さのそれ。どきりとして、逸らしたいのに、目を離せなくなる。



「……公の場でイチャつかないでもらえます？」



は、と。

我に返って顔を上げると、わたしたちをジト目で見下ろしているさお。……と、どこからともなくわたしたちに向けられている、みんなの視線。



「な……っ。

べ、つに、イチャついてなんかないし……」



衣沙しか見えてなさすぎでしょわたし……！

もうちょっと自重して……！




自分に自分で喝を入れながら、その場を離れる。

衣沙はただ、ゆったりと笑ってみせただけで。



「っていうか、姐さん」



その余裕が、ずるいな、と思う。

でも、そういうところが、かっこよくて。



「……なに？　さお」



「俺が告白したこと、忘れてません？」



「……あ」



やっぱり衣沙のことが、すきだ。

……ほかの誰に、なんて、言われたとしても。